私たち離婚します。 残ってる住宅ローンはどうなるの?

【知っておきたい離婚時の住宅ローン➊】離婚しても住宅ローンは生きている

愛も醒め協議離婚することに、でも二人は愛の巣のことをすっかり忘れていたのです。顔も見たくない二人は戸籍も、生活の場も別々に。が、どっこい住宅ローンの契約は生きたままです。

当然ローンの契約者はこれからも満期まで返済を続けて行かなくては・・・

わが国では夫=名義人の場合が多く、離婚後も妻が家を出て行き、収入の多い夫がそのまま住み続けるならローンの返済はスムーズに行われます。

問題は夫=名義人なのに夫の不貞などで夫が家を出た時、奥さんはご用心を!住宅ローンは家に住み続ける人が支払うことになっているからです。銀行が支払能力にOKを出すかどうかです。

 

解決方法の一つに住宅ローンの名義人を実際に住む人(妻)に変更するという手がありますが、奥さんに所得がないとそれも難しいので、離婚の際にはしっかりと慰謝料を取りましょう(笑)

離婚は色んな問題生みますので、結婚して住宅ローンで家を購入した夫婦に事前に「離婚」した時のことを話し合いしたのかについてアンケートを取りましたので参考にしてください。

●いいえ:86人(回答数)
●はい:14人

▼そもそも離婚を想定した話し合いは一度もしていない(30代女性/専業主婦)

▼住宅ローンを組むのが精いっぱいで、離婚のことなど考えられなかった
(50代男性/専業主夫)

▼離婚なんて考えたく無かったので一度も話し合わなかったが、もしもの時のために
話し合っておけば良かったと思う(20代女性/パートアルバイト)

▼離婚のことまで話さなかったが、住宅ローンは二人で等分に負担することは話し合った
(40代男性/会社員)

このように愛の巣を作る前に離婚を想定するなど、まさに想定外のようです。ただ住宅ローンは大きな買い物ですから、離婚することになればそれなりの責任を取るという人もいます。また少数派ですが、「話し合いをした」という人もいました。

▼お金に関係することで、テレビ番組でもお金のトラブルが絶えないので話し合った
(20代女性/パートアルバイト)

▼将来のことは分からないので、話し合った。ローンが残っている家にどちらかが残る場
合もローンを払い続けなければならないので、離婚の事情やお互いの経済状態によって
どうして行くかを新たに検討することを話し合った(50代女性/専業主婦)

▼話し合いは当然、結婚なんて一生の契約ではない。離別や死別についてもお互いの認識を分かり合うことはローン以外にも大切なこと(40代女性/その他専門職)

 

話し合いをした人は「将来のことは分からない」という意見が多数あり、ニュースや情報番組で見るお金にまつわるトラブルに、“もしも”に備えたいという気持ちが強く働いたのでしょうね。

 

 

【知っておきたい離婚時の住宅ローン➋】住宅ローンが残った家には住めないの?

離婚しても住宅ローンが残っていると家は売るに売れないので、私(妻)が住み続けることに
なりましたが、トラブルに巻き込まれるのはイヤですから、どんなことに注意すればいいのか
専門の方(A弁護士)にうかがってみました。

◆A弁護士➡分かりました。ではリスクの回避法の前に確認しておいていただきたい重要な
ポイントが2つありますので、そちらからご説明しましょう。

 

<ポイント1>住宅ローン名義人と所有名義人は誰ですか?

・ローン名義人;ローンを申し込んだ(契約した)人のことで債務者とも言います。
家計を夫がもっている場合は夫が名義人になっていることが多いですが、最近は共稼ぎ家庭
が増えたため夫婦で名義人(連帯債務者といいます)になっていることもあります。

・所有名義人;対象の住まい(不動産)の登記簿に記載されている名義の人のことです。
ローン名義人はその家に住むことが必要条件なので、所有名義人とローン名義人はほとんど
同一ですが、奥さんのように離婚して所有名義人を変える人もあり、常に同一ではないこと
を記憶しておいてください。

 

<ポイント2>連帯債務者と連帯保証人は誰ですか?

・対象の住まい(不動産)の「連帯債務者」や「連帯保証人」が誰かを確認してください。
あなた方は共働きで、ご主人(夫)の収入だけではローンの審査が通りにくいので、奥さん
の収入も合算してローンを組みましたね。このように夫婦でローンの名義人になっている時は夫婦が共に連帯債務者になり、まったく同じ支払い責任(債務)を持つことになります。

・ローンの名義人が返済を滞納した場合、直に債権者の金融機関から請求を受けるのが連帯保
証人です。ローン名義人と同じ責任を負っていますので、請求されると断れません。

以上2つの確認ポイントは分かりましたか?では続いて3つのケースで勉強しましょう。

 

(ケース1)ローンの名義は夫のままで、夫は家を出て、妻と子供が住み続ける

未成年の子供がいる場合、離婚後も妻子が安心して生活できるように、養育費の代わりに
夫がローンを払い続ける。ただ子供のためとは言え、家を出た夫がいつまでもローンを払い
続けてくれる保証はありません。ですから次のようなリスクがありますので注意が必要です。

 

★リスクその1

ケース1の場合、財産分与としてローンの名義人を妻に変えると、債権者の金融機関は
“夫が住んでいること=ローン名義人の条件”として、契約違反と見なして残っているローン
の全額一括返済を求めてくる場合がありますので要注意です。

 

★リスクその2

元夫が経済的に困りローンの返済を滞ると、債権者は抵当権の行使という強硬手段を取る
のが通例です。元夫に支払い能力がないと判断されると、せっかくあなたが財産分与で得
た家は差押えられ、競売にかけられる可能性があります。競売物件になると、立ち退きの強制執行を受け、親子が路頭に迷うことになりかねませんよ(;´д`)トホホ。

 

★リスクその3

あなたが元夫の連帯保証人になっていて、元夫がローンの支払いを滞納することがよく
あると、債権者からあなたにも支払い要請が来ますが、「元夫に請求して」と反論することは出来ません。それは、連帯保証人は催告の抗弁権を持っていないからです。

残念ながら直ちに連帯保証人のあなたにローンの残債の支払い責任が生じてくるのです。

悪いお話ばかりしましたが、このようなリスクに備えて、法的効力のある公正証書に記して
おくとか、住み続ける方法として任意売却の知識を持っておくなど、奥さんにとってより良い
対処法を勉強しておいてください。

 

 

(ケース2)ローンの名義は夫のままで、妻と子供は家を出て、夫が住み続ける

ケース1と違って、この場合は債務者との契約違反にはなりません。ただし奥さんがその
まま連帯保証人になっていると、債権の責務から逃れられませんので対処すべきですね。

連帯保証から外れるには、ローンの借り換えや一括返済などの方法がありますが、奥さん
に経済的な余裕がないとできません。お勧めは、協議離婚ですから、連帯保証についても
しっかりと話し合って「公正証書」に次のような有利な条件を記しておくことです。

「離婚後、主たる債権者の元夫が住宅ローンを滞納したため、連帯保証人の元妻が支払い
を肩代わりした場合は、債務処理に費やした負担金全額を元夫に請求できるものとする」
という内容にしておけば、滞納した本人(元夫)に最終的な責任を負わせることができる
と思います。

 

(ケース3)住宅ローンの名義を妻に変え、夫は家を出て。妻と子供が住み続ける

このケースでは、奥さん一人の収入でローンの返済ができるかがポイントです。妻の返済
能力に問題なしと債権者が判断すると名義変更は可能でしょう。が、奥さんのように離婚
した妻の多くは支払能力を持っていないために名義変更が難しいのが実情です。債権者は
ローンが完済されるまでは名義変更には応じません。

 

 

そこで奥さんがどうしても名義変更を希望されるなら次の方法をお教えしましょう。

 

➀住宅ローンの完済を待つ

元夫のローン完済を待ち、完済後に名義変更の手続きをすれば債権者も了承します。た
だローンの完済には20年~30年はかかるでしょうから、完済後に元夫が名義変更に
応じてくれるか分かりません。この方法をとるなら、離婚の際に名義変更の取り決めを
離婚協議書などの法的効力のある公正証書に必ず記しておきましょう。

 

②住宅ローンを借り換える

奥さんが今残っている残額の借り換え審査を受け、あなたの収入や財産で返済が可能と
債権者が判断してくれれば、奥さん名義で借り換えることができます。ただアルバイト
やパートの収入だけですと、不安定と見られますのでご注意ください。

 

▲ それでは最後に、離婚後、住宅ローンが残っている家に住み続けるためには

後々のトラブルを考えると、ご主人がそのまま家に住み続け、奥さんとお子さんが出る
ことをお勧めします。

奥さんも連帯債務者や連帯保証人になっていますから、元夫がローンを滞納すると直に
あなたにも督促が行き火の粉が降りかかります。そのことを自覚して、債務者の元夫と
コンタクトを取り、ローンを滞納しないように監視する必要があります。

滞納が続くと最悪の場合、家を競売にかけるために強制立ち退きをさせられることになりかねません。

この事態を避けるためには住宅ローンが残っている家でも売却できる“任意売却”という
方法も知っておくべきです。

 

 

【知っておきたい離婚時の住宅ローン❸】夫婦とも住まないので売却する方法は?

離婚後、夫婦とも今の家には住みたくないのが人情かも!そこで家を売却してその利益を住宅
ローンの支払いに充てる方法もあります。

売却益がローンの残額を上回った(アンダーローン)時はお互いで財産分与しても問題ありませんが、下回った(オーバーローン)場合は、借入金が残りますので返済を続けないといけません。

それでも家を売りたいという場合に、前述の“任意売却(リースバック)”という方法があるのです。

任意売却には債権者(金融機関)の了承と売却を斡旋してくれる専門業者の協力が必要です。

 

家を売っても少しは残債が残る場合が多いですが、金融機関は競売の手間が減るし、確実に返済してもらえるので了承を得られ易くなりますが、ただ悪質な斡旋業者にはご用心を!

 

 

【知っておきたい離婚時の住宅ローン❹】契約時の連帯保証人はどうなるの?

住宅ローンを組む際、夫婦のどちらかが名義人に、どちらかが連帯保証人になるケースが多く見られます。単なる保証人なら債務者がローンの返済ができない場合のみ責任を負います。一方
連帯保証人は“ローンが完済すれば解除される”という金融機関との契約ですから、債務者に支払能力があっても、連帯保証人は同等の返済義務を負います。離婚してもローンが完済できていない限り、連帯保証を解除することは難しいのです。連帯保証の解除は難しいですが方法がないわけではありません。奥さんの単独の収入で住宅ローンを借り換えると、連帯保証を外すことは可能です。

 

 

【知っておきたい離婚時の住宅ローン❺】離婚が決まったら考えること&やること

離婚が決まった時、当然まだ住宅ローンは残っていますよね。ではどう対応するか考えましょう。

 

【確認1】住宅ローン不動産名義と財産分与

<不動産名義>
不動産(土地や建物)が誰の名義になっているかは、法務局で登記簿謄本を閲覧すれば分かります。特に主債務者や連帯保証人が誰になっているかしっかりと確認することです。

<財産分与>
一般的な財産分与では土地・建物などの不動産は財産分与の対象になります。しかし婚姻前に
取得していれば対象外になり、婚姻中に取得したものは対象になりますので、離婚後のお二人
の生活をよく考えて財産分与の割合を決めてください。

 

【確認2】住宅ローンの残高

離婚後の生活のためには特に重要な確認事項です。残高確認は「召喚表(返済予定表)」で確認
しましょう。金融機関に依頼すれば再発行してもらえますから、必ず確認してください。

家を売却する時には、不動産屋の査定金額の算出も欠かせません。

前にも説明した査定金額が残高より「アンダーローン」になるか「オーバーローン」になるかは、奥さんの今後の生活を左右しかねませんから。

 

【確認3】離婚した際の住宅ローンの手続き

●夫婦それぞれ家を出る場合:任意売却
住宅を売却処分して別々の新生活を始める時は、売却金額と住宅ローンの残高のバランスを
考えて財産分与することが大切です。

●不動産名義人が住み続ける場合
名義人がそのまま住宅ローンを支払い続けていけば良いのです。ただ名義人の夫以外に妻も負担(連帯債務者)していた場合、金融機関と交渉して責任を外してもらう必要があります。

●不動産名義人以外の人が住み続ける場合
名義人の夫(または妻)が家を出た場合、出て行く名義人がローンの返済をするわけですが、
名義人が返済を止めてしまうことがよくあります。奥さんには離婚が決まった時点で金融機
関と相談して、住み続ける奥さんに名義変更することが賢明な方法です。

ここまでA弁護士を煩わして、夫婦が離婚した時、特に妻が住宅ローンの対応に困らない方法を教えていただきました。

離婚を前提に結婚する人はいないでしょうが、将来は誰にも予測できません。様々なリスクを想定しておくことは無駄にならないでしょう。

 

しっかりと“もしも”に備えてください。
愛の夢が醒めた時、離婚というリスクがやって来ます。離婚後の生活に大きな影響を与えるのが住宅ローンです。

 

その処置を疎かにしたため、家は競売にかけられ家族も路頭に迷いかねません。
ご夫婦の最大のリスク回避の方法は“そもそも離婚しない”ことです。

以上